誰にも相談できないまま、40代になった|家族にも友人にも言えない話の、置き場所
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早わかり
- 「不安や悩みの相談相手がいない」と答えた人は8.7%。9割は「いる」と答えています(内閣官房「人々のつながりに関する基礎調査」令和5年)
- 別の設問では、悩みを抱えている人の43.3%が、家族・友人等から手助けを受けていませんでした。「相談相手がいる人」に限った集計ではありません
- 相談への受け止め方には「相手の負担になる」10.6%、「相談しても無駄」9.9%、「恥ずかしい」5.6%などもあります。実際に相談しなかった理由を直接尋ねた結果ではありません
- 同じ調査で「相談すると解決しなくても気持ちが楽になる」と答えた人は72.3%。「解決の手掛かりが得られる」の57.5%を上回ります
- これらは相談に対する意識を複数回答で尋ねた数字です。相談前後の変化や、聞いてもらうことの効果を測定した調査ではありません
- 眠れない・食べられない状態が2週間以上続いているときは、この記事のどの方法よりも先に医療機関へ
「誰にも相談できない」という言葉には、二つの違う状態が混ざっています。
ひとつは、話す相手が物理的にいない状態。もうひとつは、相手はいるのに口に出せない状態です。
この二つは、見た目が同じで中身が違います。前者なら相手を増やす話になりますが、後者はそうではありません。相手が増えても、言えないものは言えないままだからです。
この記事が扱うのは、後者のほうです。
数字で見ると、「相手がいない」人は少数派
内閣官房の孤独・孤立対策担当室が、全国の満16歳以上2万人を対象に行った「人々のつながりに関する基礎調査」(令和5年、有効回答11,141人)に、こういう設問があります。
「あなたに不安や悩みが生じた場合、相談相手はいますか」
回答は、「いる」90.7%、「いない」8.7%でした。
相談相手がいない人も一定数います。この先は、相手がいても話しにくい場合を中心に考えます。
悩みがある人の4割強は、家族・友人等の手助けを受けていない
同じ調査には続きがあります。
日常生活で不安や悩みを感じていると答えた人は72.9%。その人たちに「家族・親族や友人・知人から、相談するなどの手助けを受けていますか」と尋ねた結果は、「受けている」52.7%に対して、「受けていない」が43.3%でした。
90.7%は回答者全体を、43.3%は不安や悩みがある8,125人を対象にした割合です。集計対象が違うため、「相談相手がいる人の4割が相談していない」とは言えません。
相談相手の有無と、実際に手助けを受けているかは別の設問です。相手がいても話しにくい場合はありますが、ここに示した二つの割合だけでは、その人数や理由までは分かりません。
相談相手の有無で、孤独感は8倍近く違う
翌年の調査(令和6年、有効回答10,876件)では、この設問と孤独感の関係が集計されています。
孤独を「しばしば感じる・常に感じる」と答えた人の割合は、相談相手が「いる」人で2.7%、「いない」人で21.2%。八倍近い開きがありました。同じ調査で新しく加わった「気軽に話せる相手」の設問でも、いる人2.7%、いない人24.5%と、ほぼ同じ形になっています。
相談相手を持っているかどうかは、気分の問題として片づけられる差ではない、ということです。
言えないのは、言ったあとが怖いから
令和5年の調査は、「不安や悩みを相談することについて、どのように感じますか」を複数回答で聞いています。並んだ選択肢のうち、後ろ向きのものを取り出すと次のようになります。
- 相談すると相手の負担になる……10.6%
- 相談しても無駄である(相談しても解決しない)……9.9%
- 相手に連絡を取ることや、不安や悩みを説明するのが面倒である……7.8%
- 相談することが恥ずかしい……5.6%
これらの回答からは、相手の負担や相談の結果への懸念も読み取れます。ただし、各人が実際に相談しなかった理由を直接尋ねた結果ではありません。
相手の顔が曇る。話しても変わらない。長い説明をさせられる。弱いと思われる。口を開く前に、その後の場面のほうが先に見えてしまう。
こうした心配が、話し出すことをためらう背景になる場合があります。話しにくい理由は人によって違い、相手の不在や、関係の安全性も含めて考える必要があります。
40代で、この予測はきつくなる
臨床心理士の堀越勝さんは、心のなかには「〜すべき」「〜であるべき」と命じる、もうひとりの厳しい自分がいると書いています。そしてその声は、年齢とともに厳しくなりやすい(『感情の「みかた」』)。
40代は、職場でも家でも「聞く側」に回りやすい年代です。部下の相談を受ける。親の心配を聞く。子どもの不安を受け止める。
受け止める側に長くいると、自分が受け止められる側へ回る動作のほうが、だんだん不自然に感じられるようになります。
性格の問題というより、立ち位置の問題です。
家族・友人・職場、言えない理由はそれぞれ違う
令和5年の調査で、相談相手が「いる」と答えた10,107人に相手の顔ぶれを尋ねた結果は、家族・親族93.5%、友人・知人59.6%、仕事・学校関係者18.6%、病院・診療所の医師14.6%という順でした。
相手は同じでも、言えなくなる理由は相手ごとに違います。
家族──悩みの発生源と、相談先が重なっている
同じ調査で、不安や悩みが「ある」と答えた8,125人に内容を聞くと、健康62.1%、収入や資産・老後の生活設計58.0%に続いて、家族・親族間の人間関係が18.9%で挙がっています。
五人に一人近くが、家族のことで悩んでいる。その人たちにとって、相談先の筆頭である家族は、同時に悩みの発生源です。
作家の下重暁子さんは『家族という病』で、近い相手ほど「分かっているつもり」になり、確かめる作業をやめてしまうと書いています。友人とは分かり合おうと努力するからよく話す。家族は同じ家に長くいるだけで、心のなかまでは踏み込まない。
近さは、話しやすさの保証ではありません。近いから話せない、という向きも同じくらいあります。
下重さんはもうひとつ、「迷惑をかけたくない」を口癖にした人が、結局なにも言わずに去っていく話を書いています。遠慮は優しさの形をしていますが、残された側には空白として残ります。
友人──話したあとも、関係が続いてしまう
友人・知人を相談相手に挙げた割合は、40代では男性59.5%、女性70.6%でした(相談相手が「いる」と答えた人のうち)。
友人に言いにくいのは、関係がこのあとも続くからです。今日話した内容を、相手は覚えたまま来月も会う。次に集まったとき、その話を知っている人として同じテーブルに座る。
堀越さんは、心のエネルギーは人との関係を通してしか充電できないとしたうえで、友人の数そのものは関係がない、安全な関係がひとつあれば足りる、と書いています(『感情の「みかた」』)。裏を返せば、百人いても安全な一人がいなければ、寂しさは鳴りやみません。
40代は、友人の数が減っていく年代です。減ったこと自体は問題ではありません。問題になるのは、安全に話せる相手がゼロになっているときです。
職場──言葉が評価に変換されてしまう
仕事・学校関係者を相談相手に挙げた割合は、全体では18.6%。ところが40代に限ると、男性34.0%、女性31.7%と、全体の倍近くに上がります。
40代は、職場に相談相手を持ちやすい年代だといえます。それでも言えないものが残るのは、職場では言葉が評価に変換されるからです。
「最近しんどくて」は、そのままの意味では受け取られません。稼働の見込み、任せられる範囲、来期の配置。こちらが気持ちとして出したものが、相手のなかで人事の情報に変わっていく。悪意がなくても、その変換は起きます。
職場では、状況の相談はできても、状態の相談ができない。そういう線が引かれています。
「相談」と「話を聞いてもらう」は、別のもの
ここまで「相談」という言葉を使ってきましたが、この言葉自体が邪魔をしている面があります。
相談と聞くと、問題を持ち込んで答えをもらう場面が浮かびます。だとすれば、答えの出ない悩みは持ち込めない。相手の時間を取るだけになる。そう考えて、口を閉じることになります。
ところが調査の数字は、別のことを示しています。
「不安や悩みを相談することについて、どのように感じますか」への回答で、いちばん高かったのは次の項目でした。
- 相談することで解決しなくとも気持ちが楽になる……72.3%
- 相談することで解決できる、または解決の手掛かりが得られる……57.5%
解決を挙げた人より、解決しなくても楽になると答えた人のほうが、15ポイント近く上回っています。
この設問は、相談をどう受け止めているかを複数回答で尋ねたものです。相談前後の変化を測定したり、解決策を得ることと聞いてもらうことの効果を比較したりした調査ではありません。「気持ちが楽になる」と捉える回答が多かった、という範囲で読む必要があります。
答えが出ない悩みでも、安心して話せる相手に気持ちを伝える選択肢はあります。「解決策より、まず聞いてほしい」と、求めていることを先に伝えてみる方法もあります。
持ち込むものは、問題ではなく状態でいい
堀越さんは、つらい感情を「警報」として扱っています。悲しみは大切な何かを失ったサイン。怒りは自分の領域が侵されているサイン。寂しさは心のエネルギーが切れかけているサイン。鳴っている警報を消そうとするより、何を知らせているのかを聞くほうが結局は早い、という見方です(『感情の「みかた」』)。
警報は、答えを求めていません。鳴っていることが誰かに伝われば、それで役目を果たします。
一人で抱えたまま、持ちこたえる方法
今日すぐ誰かに話せるとは限りません。話せない期間をどう持ちこたえるか。手のうちにある方法を三つ挙げます。
紙に書く
つらい出来事について書くことと健康の関係は、心理学で長く調べられてきたテーマです。カレン・バイキーとケイ・ウィルヘルムによる総説(Advances in Psychiatric Treatment 2005年、11巻5号、338-346頁)は、この手法の標準的な手順を「1回15〜20分、3〜5回にわたって、つらかった出来事について書く」と紹介しています。
報告されている変化は、気分の改善、心理的な健康度の向上、医師の受診回数の減少など。ただし同じ総説は、結果が一貫していないことも書いています。誰にでも同じように効く方法ではありません。
やってみるときのこつは、読み返す前提で書かないことです。文章を整えようとすると、書くこと自体が仕事になります。誤字も順番も気にせず、あとで捨てるつもりで書く。
声に出す
頭のなかだけで考えているとき、相手をしているのは、先ほどの「厳しいもうひとりの自分」です。堀越さんは、一人で考え込むことはこの厳しい自分との対話になるため、現実から離れて苦しくなりやすいと書いています。
声に出すと、同じ内容でも輪郭が変わります。口にした瞬間に「言うほどのことでもなかった」となることもあれば、逆に「これは思っていたより重い」とはっきりすることもある。どちらでもかまいません。頭のなかに置いたままにするより、扱えるものになります。
相手はいりません。運転中の車内、風呂、歩いているとき。声にする場所だけ決めておくと、続けやすくなります。
時間を区切る
抱えている状態がつらいのは、それが一日じゅう続くからです。考えないようにすると、かえって出てきます。
そこで、考える時間のほうを決めてしまう方法があります。夜の20分だけ考える。それ以外の時間に浮かんできたら「20分のときに」と送り返す。
堀越さんは、我慢には二種類あると書いています。目的があり、自分で選んだ我慢は心の筋肉になる。目的がなく、させられている我慢は苦々しさしか生まない。時間を区切るのは、抱えることを「させられている状態」から「自分で選んだ状態」へ置き換える作業にあたります。
三つとも、治療ではありません。持ちこたえるための道具です。
それでも足りないときに、残っている選択肢
書いても、声に出しても、時間を区切っても、追いつかないときがあります。
令和5年の調査で、行政やNPO等の支援を受けていない理由を聞いた項目(7,043人)を見ると、「支援が必要ではないため」63.7%のあとに、こういう答えが並びます。
- 支援の受け方がわからないため……17.2%
- 支援が必要だが、我慢できる程度であるため……15.8%
- 支援を受けても状況は変わらないと思うため……12.6%
「必要だが我慢できる程度」と答えた人が、6人に1人近くいます。必要だと自分でわかっていて、それでも我慢している状態です。
医療機関のほうが先になる場合
眠れない、食べられない、朝起き上がれないといった状態が2週間以上続いているときは、この記事に書いたどの方法よりも先に、心療内科や精神科などの医療機関で相談してください。診断ができるのも、薬を出せるのも、医療機関だけです。
体の不調が続いているときに、気持ちの問題として扱ってしまうと、原因の確認が遅れることがあります。どこからが治療の話なのかという判断は、専門家に渡してしまうほうが安全です。
関係が続かない相手に話す、という選択
家族・友人・職場に言えない理由を並べたとき、三つに共通していたのは「このあとも関係が続く」ことでした。
だとすれば、関係が続かない相手であれば、その理由は外れます。専門家に話すことの実務的な利点は、そこにあります。守秘義務があり、こちらの人間関係の内側にいないため、話した内容が来週の食卓や来期の配置に影響しません。
令和5年の調査でも、相談相手として「病院・診療所の医師」を挙げた人は14.6%いました。専門職に話すことは、特別な行為ではなくなっています。
受けるかどうかを迷っている段階、申し込み画面まで行って閉じてしまう段階、料金や流れを知りたい段階については、それぞれ別の記事に分けてあります。この記事の下にまとめました。
よくある質問
相談できる相手がいないのは、自分だけでしょうか
相談相手がいないと答えた人は8.7%でした(令和5年「人々のつながりに関する基礎調査」)。一方、悩みがある人の43.3%は家族・友人等から手助けを受けていませんでした。二つの数字は集計対象が異なり、43.3%を「相手はいるが相談していない人」の割合とは解釈できません。相談相手がいるかどうかと、必要な支援につながっているかは分けて考えられます。
家族に言えないのは、冷たいということでしょうか
言いにくさの理由は、愛情の量とは別のところにあります。悩みの内容として「家族・親族間の人間関係」を挙げた人は18.9%。悩みの発生源と相談先が重なっている場合、家族は構造的に相談先になりにくくなります。下重暁子さんは『家族という病』で、近い相手ほど「分かっているつもり」になって確かめなくなると書いています。近さは話しやすさの保証ではありません。
職場の人に「しんどい」と言うのは、避けたほうがいいですか
一律に避ける必要はありません。相談相手が「いる」と答えた人のうち、仕事・学校関係者を挙げた割合は全体で18.6%ですが、40代では男性34.0%、女性31.7%と高くなっています。ただし職場では、こちらが気持ちとして出したものが、稼働や配置の判断材料として受け取られることがあります。仕事の調整として相談することと、気持ちを聞いてもらうことは、相手を分けたほうが扱いやすくなります。
答えの出ない悩みでも、話していいのでしょうか
答えが出ない悩みでも、安心して話せる相手に「解決策より、まず聞いてほしい」と伝える方法があります。調査では72.3%が、相談すると解決しなくても気持ちが楽になると回答しました。ただし、これは相談への意識を尋ねた結果で、実際の効果や、誰もが楽になることを示す数字ではありません。
一人で持ちこたえる方法は、何かありますか
書く・声に出す・時間を区切る、の三つが手のうちにあります。書くことについては、1回15〜20分を3〜5回という手順が研究で使われてきました(Baikie & Wilhelm, 2005)。ただし結果は一貫しておらず、誰にでも同じように効くものではありません。いずれも治療ではなく、持ちこたえるための道具として考えてください。
どのタイミングで医療機関に行けばいいですか
眠れない、食べられない、朝起き上がれないといった状態が2週間以上続いているときは、医療機関で相談してください。診断や薬の処方ができるのは医療機関だけです。どこからが治療の話なのかを自分で判断しようとせず、専門家に渡してしまうほうが安全です。
おわりに
「誰にも相談できない」には、話す相手がいない場合と、相手がいても話しにくい場合があります。二つを分けて考えることが、いま必要な支えを探す出発点になります。
相談をためらう背景には、負担をかけるのではないか、話しても変わらないのではないか、という心配があることもあります。
同じ調査で、相談すると解決しなくても気持ちが楽になると捉える回答は72.3%でした。これは相談への意識を示す数字です。実際に話した後の結果や、心配していたことが起きなかったことまで示しているわけではありません。
今日、誰かに話す必要はありません。話さないまま持ちこたえる方法も、この記事に三つ書きました。
ただ、「言えるはずがない」という前提のほうは、少し疑ってよさそうです。置き場所は、思っているより残っています。
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参考・出典
- 内閣官房孤独・孤立対策担当室「人々のつながりに関する基礎調査(令和5年)調査結果の概要」(令和6年3月/調査期日 令和5年12月1日/有効回答11,141人)(問16・問17・問18-2を参照)
- 内閣府孤独・孤立対策推進室「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)調査結果のポイント」(令和7年4月25日公表/有効回答10,876件)
- Baikie, K. A. & Wilhelm, K. “Emotional and physical health benefits of expressive writing”, Advances in Psychiatric Treatment, 11(5), 338-346, 2005
- 堀越勝『感情の「みかた」──つらい感情も、あなたの「味方」になります。』
- 下重暁子『家族という病』(幻冬舎新書)
――グレイス
2026年9月9日更新:相談相手の有無と支援利用状況の集計対象を区別し、相談への意識を効果測定として扱わない説明に修正しました。本文・早わかり・FAQをそろえ、元の調査資料へのリンクを追加しました。